紅茶の基本

紅茶ができるまでの工程を知ってみよう!!~チャの木の生育・収穫から製茶工程まで~

お茶は、水を除くと世界で最も多く消費されている飲み物です。そんなお茶の一種である紅茶は、実は緑茶やウーロン茶と同じ木から作られていることをご存じでしょうか。
今回は紅茶のもととなるお茶の木から、紅茶が出来上がる製造工程までをご紹介したいと思います。興味を持った目次から読んでもいいかと思います。ぜひこの機会に知っていただけると嬉しいです!!

この記事を読むとわかること

・紅茶のもとになる植物、茶の木についての特徴や生育について知ることができます。
・普段飲んでいる紅茶に関する製茶の全工程を知ることができます。

【お茶の木とは】

お茶の木について

私たちが「茶」と呼んでいるものには、紅茶、緑茶、麦茶、そば茶などさまざまあります。その中で、紅茶、緑茶、ウーロン茶は、同じチャの木から作られていて、ツバキ科の常緑樹で学名をカメリア・シネンシス(Camellia Sinensis L.O. Kuntze)といいます。

チャは中国の雲南省あたり、チベット山脈の高地と、中国東南部の山地との地帯が原産地といわれ、現在、インド、スリランカを含む東南アジア地帯、台湾、中国、日本などを中心に、世界各地で栽培されています。

チャの木をさらに大別すると、中国種とアッサム種の2つの品種に分けられます。
中国原産の中国種は、日本、中国、台湾など山岳地に生育し、酸化酵素の活性が弱く酸化発酵がしづらいため、緑茶に多く使われます。
インドのアッサム地方を原産とするアッサム種は、インド、スリランカ、ミャンマー、ケニアなどの熱帯地域で生育し、酸化酵素の活性が強く酸化発酵がしやすいため、主に紅茶やウーロン茶に使われます。
2つの品種には、下記のとおりそれぞれの特徴があります。

中国種

【葉の特徴】厚みがある、葉先に丸みがある、葉肉は薄くて硬い
【成葉の大きさ】小さい(9×4cm以下)
【樹形】2~3m、幹の下の方から枝分かれしている
【育成条件】比較的寒さや干ばつに強い、寒冷地や湿度のある暑い場所でも生育可能
【タンニンの含有量】少ない

アッサム種

【葉の特徴】中国種より薄い、葉先が尖っている、葉肉は柔らかくて厚い
【成葉の大きさ】中国種の約2倍程度(12×4cm以上)
【樹形】10m以上になるものもある、幹があり枝分かれが少ない
【育成条件】湿度のある暑い場所を好む、寒冷地や乾燥した場所では生育が難しい
【タンニンの含有量】多い

紅茶・緑茶・ウーロン茶の違いについて

紅茶、緑茶、ウーロン茶は、同じチャの木から作られますが、色も味も香りも全く異なるのは、生葉の加工方法に違いがあるからです。不発酵茶・半発酵茶・発酵茶と3つに大別することができます。

【不発酵茶】:緑茶
【半発酵茶】:ウーロン茶
【発酵茶】:紅茶

【紅茶】は生葉を揉んだ後、酸素に触れさせて、リンゴが空気に触れて変色するのと同じ酸化発酵をさせます。その結果、こげ茶色から黒褐色に変わり、ブラックティーと呼ばれる茶葉になります。

【緑茶】は生葉を揉むまでは紅茶やウーロン茶と同じですが、その後発酵をさせないで、すぐに蒸したり乾燥させたりして処理し、緑色のままの茶を作り出します。

【ウーロン茶】は上記の緑茶・紅茶のちょうど中間的な処理で、紅茶になる前に発効を中止したものになります。

※紅茶は、中国のウーロン茶(半発効茶)が、かつて主な輸出先であったイギリスの人たちの好みに応じて発酵を強めたことにより生まれたものだと考えられています。

お茶の木についてのまとめ

まとめ

◎紅茶・緑茶・ウーロン茶は、ツバキ科の常緑樹、カメリア・シネンシスという同じチャの木から作られています。

◎チャの木は、中国種アッサム種の2つの品種に分けられます。

◎紅茶・緑茶・ウーロン茶は、生葉の加工方法の違いにより、不発酵茶(緑茶)半発酵茶(ウーロン茶)発酵茶(紅茶)に分けられます。

【お茶の木の生育】

チャの木の生育環境は標高、土壌、気候条件がチャの個性に大きくかかわり、気候的には雨量が年間1500mm以上が必要とされます。ただし多すぎるのは不可で、年間3~4ヵ月の乾期が成長を促します。
そして風と霧と光が茶葉に刺激を与え、紅茶に仕上がったときの味や香りに影響をもたらします。
種からの成長は栽培を拡大するには時間がかかり遅いため、挿し木によって同品質のチャの木を育成する方法が多く見られます。

種子からの生育

①種子を植える:種子は水に1日をめどに浸し、下に沈んだものを選びます。表皮がやわらかくなったところで深さ2~3cmに植えます。
②発芽:40~50日後に発芽し、土から新芽がでてきます。幼木を直射日光から守るため覆いをかけて日光の量を抑えます。
③根の育成:3~4ヵ月後、種から根がでて茎を支えます。葉も3~4枚がつき、高さは20~30cmに成長します。
④成木に成長:2~3年後には高さ1~1.5mほどに成長します。新芽をもった若葉を多くつけ、茶摘み収穫ができるようになります。
③剪定:成木は放置しておくと4~5mの高さになるので、茶摘みに適した1~1.2mほどの高さに剪定します。生育開始から2年後に最初の剪定をし、それ以降は3~4年に一度、若返りをはかるため枝をすべて切り落とす大規模な剪定をします。

挿し木による繁殖

現在もっとも多くとられている方法が挿し木法という母木から取った挿し木を植え、根をつけさせて増やす方法です。
これは母株のクローンになり、種子繁殖よりも早く成長させることができ、母株のDNAを確実に受け継ぐので品質や茶葉の特徴を安定的に生育させ収穫することができます。

【紅茶の製茶工程】

紅茶の製茶工程について

紅茶は、生葉をそのまま食べてみると強い苦味と渋味、青臭い植物の香りがします。この生葉を製茶加工することによって、渋味と苦味は和らぎまろやかに、旨味と爽やかさをあわせもった美味しい紅茶になるのです。

紅茶の製茶方法は大きく分けてオーソドックス製法CTC製法(アン・オーソドックス製法)があります。
それぞれのプロセスを追ってみましょう。

オーソドックス製法について

伝統的な手作業によるお茶の製造過程を機械化した製法になり、茶葉本来の個性を引き出します。茶葉の形状は、リーフタイプとブロークンタイプの2種類があります。
インドやスリランカでは、生葉から紅茶に仕上がるまでは15~18時間ほどになります。

オーソドックス製法の工程

①摘採(生葉を摘む)
②萎凋(萎らせる)
③揉捻(揉む)
④ローターバン(ねじ切る)
⑤玉解き・ふるい分け
⑥酸化発酵
⑦乾燥
⑧グレード分け

これから詳しく説明していきます。

①摘採(てきさい)
新芽(チップ)と呼ばれる茶葉の先端とその下の2枚(一芯二葉)、または3枚(一芯三葉)を手で摘み取ります。一芯二葉は上質の茶葉を得られる理想的な摘み方で、一芯三葉は量産に適した摘み方になります。茶摘みをする労働者の多くは女性で、1日につき、平均約20㎏を摘み取るといわれています。

▲生葉を摘むイメージです。

②萎凋(いちょう)
生葉から水分を飛ばし、揉みやすくするために、風通しのよい部屋で生葉を網の上に並べ、10時間以上かけて萎らせます。萎凋により生葉に含まれる水分(約70%)は、60%くらいまで減少します。
紅茶特有の香りと色を出すための工程で、茶葉のコクや渋味にも影響がでます。

③揉捻(じゅうねん)
萎凋が終わった生葉は揉捻機(ローリングマシーン)に入れ、無圧か軽い圧力をかけて揉んでいきます。揉まれる生葉は、ねじられ、よりがかかり、繊維質が壊れ葉汁がでてきます。これによって酸化酵素の働きで発酵が始まります。

④ローターバン
揉捻が終わった茶葉は、次にローターバンと呼ばれる肉のミンチを作る機械をさらに大型にしたような機械に通されます。金属の筒の中に、ローラー式の歯が入っていて、茶葉を細かくねじ切り、より多くの葉汁を出させ発酵を促します。

⑤玉解き・ふるい分け
塊になった状態の茶葉をほぐし、均一に広げて発酵しやすくします。その後、ふるいにかけて、揉捻の不十分な茶葉は、再び揉捻にかけられます。

⑥酸化発酵
湿度約90%、室温約20~25度の環境に置き、発酵させます。茶葉は紅茶らしい褐色を帯びた色となり、香りも生じてきます。一般的には、発酵時間が短いほど抽出した紅茶液の刺激的な渋みが強めとなり、時間が長くなると刺激が和らいで濃厚な重い味となっていきます。
紅茶工程の中でも最重要視されており、この工程を止めるタイミングで、仕上がりの紅茶の水色や風味に影響が出ます。

⑦乾燥
発酵を終えた茶葉の発酵がさらに進まないように、100度近い熱風に当てて発酵を止めます。そして、60度くらいの熱風で乾燥させ、最終的に茶葉は水分量3%くらいまでに乾燥させて仕上げます。

⑧グレード分け
乾燥後のクリーニング工程のなかで茎や軸、異物を取り除きます。次に茶葉の形状を一定の大きさにそろえるふるい分け機に入れ、ここでメッシュを通過することによって均一化した茶葉の大きさに分けられます。
サイズはグレードと呼ばれ、OP、BOP、BOPFなどど表示されます。

▲オーソドックス製法で作られたリーフタイプの茶葉です。

CTC製法について

CTC製法は、機械を使い、茶葉を押しつぶす(Crush)、引き裂く(Tear)、丸める(Curl)という製法で、この3つの機能の頭文字をとってCTCと呼ばれています。
特徴としては、茎や軸部分も茶葉と一緒に顆粒状になるので、生産量を考えると効率がよくなります。味は濃く甘口な渋みとなり、顆粒状のため抽出が早く、ティーバッグの用途に適しています。


CTC製法の工程

①摘採(生葉を摘む)
②萎凋(萎らせる)
③ローターバン(ねじ切る)
④CTC機械
⑤酸化発酵
⑥乾燥
⑦グレード分け

これから詳しく説明していきます。

①摘採(生葉を摘む)
CTC製法も、オーソドックス製法と同様に茶摘みから始まります。新芽(チップ)と呼ばれる茶葉の先端とその下の2枚(一芯二葉)、または3枚(一芯三葉)を手で摘み取ります。

②萎凋(萎らせる)
CTC製法でも、萎凋により生葉に含まれる水分を約60%~70%くらいまでに減少させてから加工します。

③ローターバン(ねじ切る)
萎凋してからすぐにローターバンに入れおおまかにねじ切っていきます。

④CTC機械
CTC機械は、ステンレス製の2本のローラーから成っていて、ローラーにはエッジや溝が刻みつけてあります。そして、それぞれローラーの回転数を違うようにしており、この2本のローラーの間に茶葉を入れることにより、ローラーの圧力と回転差から、茶葉を押しつぶす(Crush)、引き裂く(Tear)、丸める(Curl)といった工程で成形されていきます。

⑤酸化発酵
CTC機械からでてきた茶葉は塊になっているので、ふるい分け機にかけ解かれた状態にしてからオーソドックス製法と同様に発酵させます。

⑥乾燥
発酵を終えると乾燥機に入れ、約100度の熱風を当てて乾燥させます。これによって酸化発酵が止まり、紅茶が仕上がります。

⑦グレード分け
CTC茶は形状が直径1mmほどのものから2~3mm程度の大きさのものまであります。また顆粒状が崩れかけて細かいものもあるので、メッシュにかけて区分けします。

▲CTC製法で作られた茶葉です。小さく丸いコロコロとした粒のような茶葉が特徴です。

紅茶の製茶工程のまとめ

まとめ

◎紅茶の製茶方法は大きく分けてオーソドックス製法、CTC製法(アン・オーソドックス製法)があります。

◎オーソドックス製法は、伝統的な手作業によるお茶の製造過程を機械化した製法になり、茶葉本来の個性を引き出します。茶葉の形状は、リーフタイプとブロークンタイプの2種類があります。

◎CTC製法は、機械を使い、茶葉を押しつぶす(Crush)、引き裂く(Tear)、丸める(Curl)という製法で作られます。大量生産に向いていて、ティーバッグの用途に適しています。

◎紅茶の茶葉は、基本手で摘み取られています。

◎酸化発酵は、紅茶工程の中でも最重要視されており、この工程を止めるタイミングで、仕上がりの紅茶の水色や風味に影響が出ます。

【あとがき】

いかがでしたか。今回は紅茶のもととなるお茶の木から、紅茶が出来上がる製茶工程までをご紹介しました。
以前、友人が家に遊びに来てくれて紅茶を出したとき、私が「紅茶の葉は人の手で摘んでいるんだよ!!」と言うと、友人は「えっ!?機械で摘んでいるんじゃないの!?」とビックリしていたのを覚えています。そしてこの会話が紅茶が出来上がるまでの工程を記事に書こうと思ったきっかけになりました。
紅茶が手元に届くまでに多くの方が関わり、日々のティータイムで美味しい紅茶が飲めること、その幸せに感謝しながら、これからも紅茶時間を楽しんでいこうと思います。

ABOUT ME
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Kayo
紅茶が大好きな一児の母です。ドタバタな毎日の中の数分のおうちでのティータイムに幸せを感じております。将来は自分のお気に入りの手作りを色々と集めた小さな紅茶教室を開くことが夢です。より多くの方が気軽に紅茶を楽しめるような情報を発信していきたいと思います。